〜 プライスバトル in カメオショップ 〜



ローマにて・・・、バス移動の時間をやりくりして、その余った時間にカメオの
お店に立ち寄ってくれた。
通りにバスを止め、そこから徒歩でかなり外れの路地に入って道なりに歩いてゆ
くと、途中から石畳の小洒落た細道になっている。

昼なので灯りこそ点いてはいないが、年代物の街灯が一定間隔にテンテンと立っ
ていて、木製のベンチまでいくつかあって、イタリア映画のワンシーンの様な素敵な
小道だ。
往年の大スター、オードリーへプバーンがヒョッコリ現れてもおかしくない様な
風景だ。

その小道を更に進んで行くと、その突き当たりにカメオショップはあった。
このお洒落な小道は、カメオショップの私道なのかも・・・。

店内から、暖かそうなオレンジ色の明かりが石畳の上に洩れていた。

狭い入り口をくぐると、こじんまりとした小さな店風ながらも商品は全てガラス
のショーケースの中に収まり、そこにものすごい高級感を感じた。

“カメオ=オバ様ブランド”という先入観がある私は、母親に1,2品 お土産
にどうかとチラリ思ったが、
彼女からは、グッチだかフェンディだかのバッグをご注文されていたので、ここ
では良しとする事にした。

それに私のような小娘には、とてもおいそれと買えるような代物ではない。
一番安いものでも3万はする。
パンの耳で涙ぐましい節約をしてきた私には、とても手が出せないものだ。

狭い店なので、一通り見たら飽きてしまった。
外のベンチにでも座っていようと店を出ると、既に店の外には私同様、『もう飽
きちゃったぜ』という顔の
ツアーの若者達がそこにいた。

開け放たれたドアから中を覗くと、店の中はオバさん達一色となっている。
皆一様に目を血眼にしてあーでもないこーでもないやっていた。

狭い店内、人にぶつかろうがお構いなしで、あっちキョロキョロこっちキョロキ
ョロ右往左往一生懸命だ。
離れて見ていると、その光景はまるで 上から棒でかき混ぜているかのように、
店内は熟女達で混ざり合っていた。
おそらくショーケースは、彼女達の手垢や鼻の脂でペトペトになっていることだ
ろう。

しかしそんな状態が延々30分以上も続いたもんだから、若者組にはたまったも
のではなかった。
ひたすら寒空の下待たされた。
頼みの綱の添乗員さんも、オババ予備軍のお年である為、『皆様、お買い物はお
早めに』等と言う筈も無く、
オバさん達と一緒になってショーケースの中の物に見入っていた。

やがて、カメオの紙袋を下げたホクホク顔のオバさん達が、一人また一人と店か
ら出てきた。

そんなに買ったんかい!?
っと、思わず突っ込みを入れたくなるほど紙袋を下げたマダムが、
『あ〜〜・・・、あれも買っとこうかしら〜〜・・・』と、店の外に出ても尚、
名残惜しそうに振り返り振り返り迷っておられる姿には誠に恐れ入った。

ある程度オバさんが揃うと、彼女達は店の外で展示会を開き始めた。
綺麗に包装された包みをわざわざ解いて、『ほらほら』と自分達の買った物を自
慢気に見せ合っている。

『あら〜ま〜、い〜物買ったわね〜。とっても似合ってるわよ〜〜。
 でも私もほらこれ、買っちゃったのよ〜12万もしちゃったわ〜〜』

『12万!!?あなた凄いわね〜・・・、私のなんか8万よ〜。でも綺麗でしょ?』

『このイヤリング、どうかしら?いくらに見える〜〜〜?』

等々、嬉しそうだ。

だが、仲良さそうに自慢し合ってはいるが、誰が幾ら幾らと値段の話になると、
みんな眉がピクピクしている。
心中、「勝った」「負けた」と値段の張り合いが、あきらかに見て取れるので笑
えた。

そんな中、最後に悠然と店から出て来たのは、オババOFオババ 天下の女社長
だ。
彼女はなんと、日本円で40万円もするブローチを買ったとの事だ。
しかもそれは自分の物ではなく、誰かへのお土産なのだと、彼女はヘッチャラな
顔してサラリと言ってのけた。
そして、それ一点だけならまだしも、他にもいろいろ買い込んだご様子・・・。

これには皆、驚きのあまりシーンとなってしまい、さっきまで賑やかだった展示
会場が、女王の登場で一気に静まり返ってしまった。恐るべし女社長!!