〜 空港リポート 〜 さてさて・・・。 そんなこんなで行くまでにいろんなアクシデントに見舞われつつも、何とか無事 成田を飛び立った。 私達のツアーは女性の添乗員さん一人を必頭に母娘1組、母娘叔母組が2組、オバサン2人1組、熟年愛人カップル1組、姉妹1組、中国人カップル1組、女の子2人組が2組、男性1名参加の 計21名のツアー一行だった。 行きの飛行機の中ではまだ誰が誰でどの人が同じツアーの人なのか、顔や名前が全く把握できていない状態なので これから8日間を共に過ごす仲間が近くの席にいる事も知らずに、ガーガ―鼾をたてて熟睡してしまったり、誤ってワインでも溢してしまった日には終日まで恥かきっ子となってしまうので、周りの様子を窺いつつ 熟睡もしないよう、なるべくおとなしくしていた。 今回のツアーは先ずミラノに降り立ち、ベニス、フィレンツェ、ローマの4大都 市を、地図で見ると上から下へ 8日間かけて移動して行くという日程である。 途中、ベローナ、ピサ、アッシジ各市もまわる。 ミラノの空港に着いた頃はもう夜の9時であった。 周りが暗いせいか、ここがイタリアだとはどうしても信じられない。 ツアーの人達に囲まれているせいか日本にいる気すらしてしまう。 スーツケースの到着が遅れているらしく、私達は空港内のだだっ広い荷物受け渡し場で、じっと待たされた。 私達の他に客は無く、やる気の無さそうな空港の係員が2,3人あくびをしなが ら、一緒にスーツケースの到着を待っていた。 私はクタクタだった。 私はどうも飛行機というものが苦手で、ちょっとの揺れでも体が過剰に反応して しまい無駄な心配を幾度となく、していた。 行きの15時間のフライトで揺れる度に多分、5回は神に祈ったかもしれない。 なので、先ほど書いたような【熟睡で鼾】の心配なんか全く無いのだ。 熟睡どころかちょっとウトウトしてても飛行機が揺れたら一瞬にしてお目目パッ チリである。 出来れば一刻も早くホテルで体を休めたかったので、空港ののん気なイタリアオヤジと今だ届かぬスーツケースにイライラを隠せずにいた。 友人やツアーの他の若者達も顔を森進一状態にひきつらせたまま、ただ無言でそこにいた。 彼らの疲労度も相当のものと見受けられる。 だがしかし! そんな状況下にありながら我らがオババ軍団は元気そのものだ。 あの中においてペチャクチャと喋くってる者はオババ達のみである。 荷物が届かなくても、居眠りしているイタリアオジジに対してもイライラしてい る様子は微塵も見られない。 彼女達より軽く30歳は若い私たち若者は皆、死んだ魚のような目をした森進一 なのに・・・。 そうこうしているうちにようやく私達のスーツケースがベルトコンベア―の上に 乗って次々と流れてくるのが見えた。 (どんなに待った事か、この時を!!) 係員のおじさん達は大きなあくびをひとつしてノッソリ立ち上がると、私達のス ーツケースを下ろす作業に取り掛かった。 マイペースなスピードだが、さすがに力だけはある。実に軽々と持ち上げるもの だ。 全部下ろし終えたオジサンは添乗員さんに、 「この地で20個以上のスーツケースが無事に、しかも全部一緒に同着するなん て珍しい事だ。キミたちはラッキーグループだ。ガッハッハ!!」っと英語で言い、ガムをクチャクチャさせながら豪快に笑った。 (私にはラッキーグループの部分しか聞き取れなかった) あちらではスーツケースが無事自分の手元に届くのは、可能性の高い偶然に過ぎない。 たとえそこが空港だろうと警察署であろうと、盗まれる時は盗まれるのだと聞い た。 それに空港では、団体の中でもスーツケースが届くのに時間差があったりするのも珍しくないという。 つまり、Aさんのスーツケースは本人到着と同時に手元に届くのだが、同じツア ーのBさんのスーツケースは何かの手違いで、 次の便の飛行機に積まれていたりして、先に荷物が届いた人も他の人の荷物が届くまで待たされるのだ。 ツアーは時間時間で動いている為、そうした事があると大幅に予定が狂ってしまう。 一体向こうの空港の警備体制はどうなっているのだと私は問いたい。 初日で、しかも空港で荷物に何か不手際があった場合、イタリアの空港さんはどのような対処をしてくれるのだろう。 まさか泣き寝入りしろとまでは言わないであろうとしても(しかし、イタリアの 係員ののん気さを見ているとそれもあるかもと思ってしまう・・・) 私は日本の安全さを初日にしてつくづく感じた。 幸い、私達の荷物は多少の遅れは合ったものの『全部一緒にご到着〜!』というラッキーグループであった為、 どうやら泣き寝入りせずに済んだようなのでとりあえずこれでよしとしよう。 こうして空港からツアー専属のバスに揺られる事40分。 やっとたどり着いた最初のホテル(リパモンティホテル&レジデンス)で私は先 ず真っ先に腰痛用コルセットを外した。 外したとたん、肺に一気に空気が入り込んできた。肺だけではない。 内臓の隅々まで空気が行き渡り、私は20時間ぶりに思いっきり空気を堪能した。 飛行機でもずっとコルセットしていたせいで私のお腹はコルセットのシワにより 、迷路のような模様をあみ出していた。 そしてそのまま部屋の様子も外の景色もろくすっぽ見ず、化粧も落とさず、風呂 にも入らず服もそのままでベットにダイブした。 疲れが体からジワジワ染み出ていく気がした。 ホテルの廊下でピーチクパーチク騒いでいるオババ軍(彼女らはどこまで元気なんだ、ホント・・・)の声を遠くに聞きながら 私は泥のように眠りに落ちていった。 |
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