私の学歴=社会学校



 となにかを匂わせるようなタイトルで始まったが、最近のできごとで決定的に書きたくなったことができたのでちょっと筆を動かそうと思う。

 さて、『私の学歴』だが高校中退だ。これについて私は何の恥も感じてはいない。しかしながら社会はそうではないようだ。簡単に説明すると、中学を卒業して、芸能人になるために東京の定時制高校に入学した。

 でも、私を学校に通わせてくれるお金のほかに、東京で一人で暮らさせてくれるためのお金が月に十数万とかかる。家賃、光熱費、そして食費諸々・・・。私が昼に喫茶店でバイトしてもたかだか知れていた。それに私が上手に生活しなかったためにパパにかなりの負担を負わせていた。

 あるときママがぽろっと言ったのだ。「パパね、あんたの生活を続けさせるためにさらに会社から借金したんだよ」きつい言葉だった。最初に300万ほど借金したパパ。そして東京の生活での時間が長くなるほど、会社からお金を借りて私に送っていてくれた。そのママからの電話で私は決意した、札幌に帰ろうと・・・。これ以上私自身のわがままを続けていたらパパがとんでもないことになっちゃう、そう思った。もう充分にいい経験をさせてもらった。普通では考えられない16歳の生活だった。何もできなかったけど、何も残せなかったけど悔いはない、といえば嘘になるけどその時は申し訳なさと感謝の心でいっぱいになって帰ろうと思った。その当時いろんな状況が重なってとりあえず札幌に戻った。

 そして十代の後半のあたりだろうか、ある人と話しててその中で学校の話が出た。その人は大学を出てからさらに大学院に進みさらに勉強を続けているという。28歳だとか言っていた。そして今度は私に聞いた。学校のことを。私は包み隠さず話した途端、態度が一変した。

 「え、高校も出てないの?信じられない。だって今18歳でしょ?高校、大学に行ってるのが普通じゃないの?本当に信じられない、そんな人がいるんだこの時代に。好きじゃないな、そんな人・・・」

 最初言葉も出なかった。なんてことを、なんてひどいことをこいつは行ってやがんだと思い、無性に腹立たしい気持ちと悲しくて泣きたくなる気持ちが私の心を一気に襲った。何度目かの心から人を殺したいと思ったときでもあった。私も勢いに任せて言葉を吐きつづけてやった。

 「は?信じられない?こっちのセリフだよ。世の中であんたが考える人生を過ごしている人ばかりじゃないんだよ。それがえらいってわけ?大学に入って勉強して勉強して勉強しつづけて、二十代後半になって親のすねをかじって生きてるのがそんなにえらいんだ。胸をはって言えるんだ。それがまっとうな生き方にになってるんだとしたら、それこそ世も末だね」

 「だってちゃんと学校でてるほうがいいじゃん、やっぱりわかんないね」

 「もうそれ以上私に向かって口を聞かないで。あんたには言われたくないね。少なくともあんたよりはまともな人間だと思うよ、学校を出てなくてもね。いろんな選択肢があるってこと覚えておいたほうがいいんじゃない?学校行っているひとだけじゃなく、働いたり、しなきゃいけないことがあるひとがいたり、一番大切なものに時間を使っているひともいるってことをさ。もし、これ以上なにか言ったら許さない!」 その言葉を最後に私はその輩と無言で別れた。

 私はそれまでも自分なりに努力してきた。中卒だから、学歴がないからとバカにされないように頑張ってきたつもりだ。自分なりの知識を身につけ、考えを深めることができるように・・・。でもこのことがあってさらに私はその想いが強くなった。もちろん、学校に行っていない分、行った人に比べたらその間の知識はない、行っていないところでの情報がないのは仕方ない。だからその時代の話しをされたらつらいのは正直ある。

 しかし、私はその間の3年間、ないし7年間、無駄に過ごしたとは思っていない。無論、ちゃんと学校で勉強して道を切り開いた人たちは尊敬する。私にはない、若いうちにちゃんとそれに気付いて、自分のやりたいことの準備を進めてた人々をとても素晴らしいと思う。でも私もその間、普通のひとが経験しないことをしてきたし、社会の中で勉強してきた。人の痛みや気持ち、多くの大人との付き合い、学校では勉強できないことを学んできたことを今でも自分の誇りとしている。

 今の社会ではもちろん誇れることではないけど、人は普通に付き合っていて、日常それで判断するわけじゃない。もっと大きなところで人は見ているものだと思う。だからいわば私もまだ勉強中だともいえる。はじめに書いた屈辱のようなことはないにしても、何度かそれに当てはまることはあるもので、そんな奴は一人でもいなくなれ!(笑)という想いと、自分への再確認のために書いてしまった。

 でも、もう一度人生やり直せるとしたなら・・・もう一度ちゃんと自分のやりたい勉強がしたい。今よりももっとはじめ易かったあの時代で・・・