カミングアウト〜ゲイ履歴書〜 part1

 

 

 カミングアウト、つまりゲイであることを誰かに告白するということをし、衝撃的場面をむかえた記憶・・・・・ほとんど見つからない。

 まず、私がゲイであることを気づいたのは、というより男性が好きだと気づいたのは何度も言うように4歳の幼稚園のときだ。それから自然に誰が好き、彼が好きと考えていたものだ。

 小学校2年生のとき、自分のことを「私、私」と呼ぶことを心配した母親が担任の佐々木先生に相談した。

 「先生、うちの子はいつも僕とも俺とも言わず“私”と呼ぶんですよ。私心配で・・・」と。

 佐々木先生は「いいことじゃないですか!“私”という言葉は決して悪い言葉じゃありませんし、大人になったら私と言うのは普通のことです。それが彼の場合はちょっと早まっているだけなんですよ。あまり心配して神経質になってたら逆に彼の個性が失われる恐れもありますので、そう心配しないでください」佐々木先生はそう言っていた。

 しかしママの心配は的中!そう、私はママが心配するよりもっと前にゲイになっていた。もしかしたら生まれる前から・・・。

 でも私は矛盾も感じていた。ママは生まれる前から“女の子”を望んでいたらしい。そしておなかの中に向かって念じていたそうだ。私が生まれても彼女は女の子のように育てた。3歳の頃にはスカートをはかされ、幼稚園に上がったらちょっとロン毛でクリクリパーマをかけ、髪にはボンボリをつけさせて幼稚園に連れてった。

 小学校に上がっても髪を短くするのを嫌い、やはりともに美容室に行きパーマをかけてかわいいかっこを望んだ。

 私はあるときからいやだった。明らかに他の男の子とは違い、それによっていじめられたこともあったからだ。

 でも男子は相変わらず好きだった。それは中学に入っても変わらなかった。中1のときは“はぎ”って子が好きだったし、中2には遠藤が好きだった。本人に直接言ってたりもした。でもこの頃はあまり深く考えてなかったのかもしれない。

 いじめに遭うまでは・・・・・。

 前のエッセイ『人生の移り変わり part1』でも書いたが、私は全校に男と性交したことが知れ渡り結果いじめられたことがあった。

 そのときに初めて“ゲイ”って悪いことなのか、ゲイになっちゃいけないのかと思った。わずか十代最初に、人生の中でも大切な問題を突きつけられた。しかし答えはすぐ見つかるはずもなく私はごまかしの生活に入った。

 女が好きって自分に一生懸命言い聞かせて頑張ってそういった生活を心がけた。そのとき女性とのセックスも経験した。私はこの瞬間『私にとっての大事な関門』として捉えていた。そのときに私にヴァージンをささげてくれた彼女に対して今も悪いと思っている。愛のないセックスを彼女に与えてしまった。とても失礼なことだ。

 そして私は中学を卒業してすぐ東京の高校に入学した。一人暮らしだった。芸能人になりたいという私のわがままを両親が許してくれ、東京に行かせてくれた。

 まもなく私は生活にも慣れ、バイトと学校との往復に明け暮れていた。そして休日には買い物などにも行ってエンジョイしていたのだ。

 そんな中いつものように買い物に行き、お腹がすいたのでレストラン街に行き、食事をしていた。しばらくたってある男性が私の隣のテーブルについた。するとその男性が話し掛けてきた。いろんな事を話した。どうして東京に出てきているのか、普段どんな生活をしているのか・・・。本当に様々なことを話した。

 私はそのとき寂しかった。誰もいない東京に出てきて家と学校、バイトとの往復、うちに帰ってもだれもいなく話し相手もいない。そんな中その彼は私の心を一瞬にして埋めてくれた。

 すっかり意気投合してしまい、彼は私にデザートをごちそうしたいと言い、近くのパーラーに連れてってくれた。それでも話しは終わることはなかった。そしてとうとううちへ来ることになった。はじめてあった見ず知らずの人を家に上げるとはなんともそのときの私は疑い知らずな少年だった。

 酒を飲み語り明かしていた。お風呂も入った。私は何のいやらしい心も持ってはいなかった。とてもやさしい気さくなお兄さんとしか感じてなかった。お風呂に入ったあとも「今日は疲れただろう?マッサージしてやるよ。得意なんだ」とその彼は言った。私はなんてやさしいいい人なんだろうと思った。

 「そして目を閉じてていいよ。そのほうがリラックスできるから」言われるままに目を閉じていた。足元からマッサージが施されていく。しばらくすると、「あれっ・・・??」もものところで手が停滞している。私はへんな気持ちになるのをこらえていた。

 すると、目を閉じている私のまぶたが暗くなるのを感じた。その直後彼が私にキスをした。真っ暗になった・・・あれ・・・なにこれ・・・・違うよ何かの間違い・・・。

 しかし紛れもない事実。私たちは愛し合った。私は彼にしがみついていた。

 そのとき私は“ゲイである自分”を呼び覚まさせられた気分だった。もちろん初めての経験ではなかった。しかしひと時ごまかしていた自分をふっきった一瞬だった。

 

次回は16歳春の友達への告白、そして初めての男との交際、別れ。さらに、前にバイトしていたところのマネージャーからの私をゲイと知った瞬間の軽蔑の言葉・・・。

 その他今まで書いたエッセイを掘り下げた内容、履歴をご紹介します。