I Like演歌 Dearひばり


 歌が嫌いな人なんているのだろうか。それぞれ皆、歌や様々な曲によって慰められてきたこと
も多いだろう。でも、演歌を好きだという人は私たちの年代ではあまり聞いたことが無い。でも私は演歌が好きなのである。ぐさっと心に刺さるマイナーコードが終始良い響きをしている。でもこだわりがあって、あの安っぽい演歌は嫌いだ。それと、びんぼーくさい詩が詰まりすぎているのもいただけない。壮大なのが好きなのだ。人であげれば、美空ひばり、石川さゆり、森昌子等がそのたぐいである。その中でも、特に私は美空ひばりが好きだった。気安くひばりちゃんと口にし、気安くメロディーを口ずさんだ。

 そのひばりちゃんが、数年前に死んだ。目の前が涙で何も見えなくなった。本当に愛していたのだ。こらえきれなくなって東京から札幌の友達の家に電話をかけ、泣きながらひばりに対する思い出やあこがれを延々とつぶやいていたのだ。私にとって、一生に一度は会ってみたかった女王なのだ。君臨という言葉が似合うただ一人の歌手だった。

 あの生き方に私は共感していた。演歌だけでなく、ジャズやポップス、その他どんな歌にもチャレンジし、又それがひばりなりに消化され、温かさや情感あふれる歌になっていた。そして、あの悪気の無いたかびしゃさも大好きだった。無理もない、昔からお嬢お嬢と言われ育ってきたのだ。彼女の言葉で、一番印象に残ったのは、「私はナットキングコールだけにはどうしてもかなわない」 その自信、そして国もジャンルも何もかも見越して言ったその耳、いつも自信に満ち溢れ堂々としているところが本当に芸能人らしく、時にはお茶目にさえ見えることがあった。あの人は、ショービジネスの中でたくましく身を燃やした女性だ。

 またひとつ時代の幕がおりただけなのだ、そう思うしか仕方ないだろう。 演歌が好きだ。私はあんたの演歌が好きだ。私だけでなくきっと皆があんたのあんたの事を語り継ぎ、そして歌い継いで行く事だろう。

  そして最後に、
  私の女王よ。安らかな永遠の眠りについて…お疲れ様・・・
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